クライアントへの提案書や社内の企画書など、様々なところで作成されるプレゼンテーション資料は、その内容の良し悪しにより高額の受注や大型プロジェクトの承認につながる非常に重要な資料です。
しかしながら相手に的確に伝わるプレゼンテーションの作成は難しく、日々頭を悩ませている方も多いかもしれません。
ここではプレゼン資料の骨組とも言える「ストーリーライン」の作成の手順について、長年にわたり戦略コンサルティングや事業立ち上げの中で様々なプレゼンテーション資料を作成してきたWORK-BOOK編集長の内田が説明いたします。
まずスライドを書くことのデメリット
皆さんの中には、スライドを書こう!と思った時、いきなりスライド作成アプリを開き、スライドとにらめっこする方はいませんか?最終成果物がスライドなので、どうしてもスライド作成から始めがちですが、いきなりスライドを書き始めると様々なデメリットがあります。
プレゼンテーション全体で達成したいことを見失ってしまう
スライドに向き合うと、1枚1枚の資料を完成させることに没頭してしまい、
- なぜその資料を作成するのか?
- その資料は誰に対してどのようなメッセージを伝えるためのものなのか?
- 説明した結果、相手にどのようなアクションを引き出したいのか?
といった、プレゼンテーションによって達成させたい大きな目的を見失ってしまうことが往々にしてあります。資料を作成することがゴールではなく、相手にプレゼンターが期待するアクションを起こしてもらうことがゴールであるにもかかわらず、このような状況になることにより、プレゼンテーション全体での伝えたいことがぼやけてしまいます。
意味に乏しいスライドができやすい
プレゼンテーションの全体像が見えていない状態でスライド作成に取り掛かると、「自分がいいたいこと」を中心にスライドが作成されがちになります。しかしながら、本来は全体のストーリーの中で各スライドの位置づけが存在しているはずであり、それが見えていない状態で言いたいことからスライドを積み上げていくと、結果として出来上がった資料を見ても「So What?(だから何?)」ということになりかねません。
資料作成の手戻りが発生しやすい
1枚1枚の資料を綺麗に作成しても、そもそものプレゼンテーション構成に修正が入った場合、作成したスライドが使われず、イチからスライドを作成し直す必要が出てきます。筆者も多数のスライドを作成してきましたが、1枚のスライドを完璧に完成させるには相当の時間がかかるため、使われなくなった瞬間に、価値のない時間が生まれてしまいます。
このようなデメリットは、結果として非効率的な作業になるため、いきなりスライド作成に入る前に、まずはプレゼンテーションの「設計図」であるストーリーラインを作成しましょう。
ストーリーラインとは何か
ストーリーラインとは、プレゼンテーション全体の流れ(アウトライン)が記載されたドキュメントです。具体的には、以下の情報が整理されたドキュメントをイメージされるといいかと思います。
- ページ番号 ・・・ 何ページにそのスライドを配置するか
- スライドのタイトル ・・・ どのようなテーマのスライドか
- スライドのメッセージ ・・・ そのスライドで言いたいことは何か
- スライドのメッセージを支える情報 ・・・ そのスライドで言いたいことを伝えるために必要な情報やイメージは何か、情報源はどこにあるか(ボディに書く内容)
まず各ページで伝えたいことのみを整理することにより、プレゼンテーション全体の流れを俯瞰することができます。タイトルとメッセージだけでも全体を流れを俯瞰することはできますが、そもそもそのページで伝えたいことを下支えする情報がなく、メッセージに説得性を持たせられない可能性があるため、メッセージを下支えする情報がどこにあるのか、ある程度想定しておくために想定情報源も整理しておくのがよいでしょう。イメージを伝えるようなスライドであれば、どのようなイメージを書くのか概要を書くとよいかと思います。
ストーリーラインのイメージ
筆者は以下のような表形式で簡単に作成しますが、スライドにタイトル・メッセージとボディの概要だけ書き込んだプレゼン資料形式で作る場合もあります(スケルトンと呼んだりします)。
P | タイトル | メッセージ | ボディ |
1 | サービス概要 | flouuは様々な成果物作成にかかる作業・コミュニケーションを円滑にするドキュメンテーションプラットフォームです | flouuの画面イメージを貼り付け |
2 | flouuの主な機能 | ※メッセージラインなし | ・成果物作成に特化したコミュニケーション機能 ・成果物作成の作業を効率化・平準化するためのテンプレート機能 ・成果物の流用性を高めるための文書管理機能 |
3 | 成果物作成プロセスにおける課題 | 私たちは成果物を完成させるための作業・コミュニケーションに多くの手段を利用しており、効率的な成果物作成の障害になっていると考えています | アウトライン検討〜再利用のステップを表現し、色々なツールのアイコンを見せる(多数の手段で資料作成させているイメージが伝わるように) |
4 | flouuを用いた成果物作成のイメージ | flouu上で成果物作成をすることにより、草案の作成から成果物の管理・再利用までを一気通貫で行うことが可能となります。 | 前ページのステップをP2の3つの機能でカバーできるイメージ |
参考:タイトル・メッセージ・ボディ
タイトルは文字通りスライドのタイトル、メッセージはそのスライドで言いたいことを端的に記載したもの、ボディはメッセージを下支えする情報です。
ストーリーラインの使い方
このストーリーラインは、スライド作成する人自身の頭の整理にも役に立ちますが、特に上司や同僚・部下など、チームとしてプレゼンテーション資料を作成する時に有用です。
まずストーリーラインの段階で他のメンバーや上司と全体のストーリーの確認・レビューをし、プレゼンテーション全体の構成について目線合わせをしましょう。その際にプレゼンテーション全体の流れに修正するべき点があれば、スライド作成に着手する前に変更することができます。
これにより、後々の手戻りのリスクや無駄なスライド作成の時間を大幅に削減することができるのです。
ストーリーライン作成の際に意識すること
ストーリーラインで記載した内容はそのままスライド作成の際に使用するものです。いざスライドを作成する際に困らないよう、以下の点を留意しておくとよいでしょう。
予めプレゼンテーションのゴールを言語化する
冒頭でも触れましたが、プレゼンテーションをするということは、それによって成し遂げたいことが必ずあるはずです。そして成し遂げたいことによって、プレゼンで伝えることは変わります。ストーリーライン作成の際には予め以下の内容を言語化し、自身の頭の整理および他のメンバー・上司との目線合わせをしておくのがよいでしょう。
- プレゼンテーションの相手
- プレゼンテーションにより伝えたい内容(他社と比較して自社サービスが優れている点 etc)
- プレゼンテーション終了後に相手に期待する心理状態(信頼のおける会社である、サービスが他社に比べて安い etc)
- プレゼンテーション終了後に相手に期待するアクション(概算見積の依頼 etc)
タイトルとメッセージは具体的に書く
タイトルとメッセージはまさにプレゼンテーションの流れを表現する2要素であり、ここが煮詰まっていない状態でスライドを書き始めると、スライドを書く時に頭を抱えることになりかねません。
理想はそのままタイトルとメッセージをスライドにコピー&ペーストできる状態まで練りこめるとよいかと思います。
Quick&Dirtyに作り、チームと目線合わせしながら修正する
コンサルティングの世界でよく言われる仕事の進め方に「Quick&Dirty(クイック&ダーティ)」というものがあります。これは簡単に言うと「完成度が高くなくてもいいので、早く仕上げる」という意味であり、一旦形を作った上で改善していく進め方を良しとしています。
ストーリーラインを作成する上でも同様で、まずは全体像を短時間で仕上げ、チームや上司とこまめに目線合わせをしながら修正をすることで効率的に完成させることができます。
ストーリーライン作成の参考になる書籍
プレゼン資料作成について記載されている本は数多くあるものの、ストーリーラインにフォーカスされた書籍は多くありません。筆者が実際にストーリーラインの作成スキルを高めるために参考にした書籍をご紹介いたします。