ビジネスの場で求められることは仕事の成果や利益ですが、職場で仕事をする上では気遣いができる人の方が「一緒に働きたい」「この人に協力したい」と感じられ、仕事が進めやすくなります。
気遣いというと、長年かけて多くの経験から学ぶ必要があると考えている人もいるようですが、実際には気遣いの基本を学び・毎日心がけることによって習得できるものなのです。
「最近の子は気遣いができない」などと職場の仲間や上司から言われないためにも、気遣いをいち早く身に付けましょう。
気遣いとは
まずは気遣いの意味を知っておきましょう。
なんとなく「人を思いやる行為」「人に良い印象を与える行為」のことであると理解していると思いますが、実際にはもう少し深い意味のある言葉です。
気遣いの意味
気遣いとは相手に対して失礼のないように配慮すること・相手の気分がよくなるようにすることです。
自分が気遣いを誰かにするときに「気遣いをしてあげる」というような使い方はしませんが、相手から気にかけていただいたときに「お気遣いありがとうございます」とお礼を言うことはあるでしょう。
たとえば自分が担当しているプロジェクトに対して上司が手助けや助言をくれたとき「〇〇の件につきましては、お気遣いいただきありがとうございました」などとお礼を伝えますし「日頃からお気遣いいただき、誠にありがとうございます」などは挨拶などでよく使用する言い回しです。
また、気遣いという言葉自体には「よくない物事が起きないか心配する」という意味もありますが、ビジネスの場でこちらの意味を使用することは少ないです。
気遣いと気配りの違い
「気遣い」と似た言葉に「気配り」があります。この二つ言葉の意味は非常に似ており、大きな違いがあるとは言えません。
- 「気遣い」:相手に対して失礼のないように配慮する・気にかけること
- 「気配り」:相手が求めることを予想して、前もって行動しておくこと
二つの言葉の意味をより明確に分けるのであれば「気遣い」は相手が1人・1つの単数の場合に使用されやすく、「気配り」は複数の人や物事に対して使われることが多いようです。
また気遣い・気配りしてもらった相手に「お気遣いいただきありがとうございました」とお礼を言うことはあっても「お気配りいただきありがとうございました」と言うことはありませんので注意してください。
仕事ができる人は気遣い上手な理由
仕事ができる人のほとんどは気遣いができています。
仕事ができる=業績・成績・成果・利益などで考えれば、仕事と気配りに関係はないように感じますが、なぜ仕事ができる人は気遣いができるのでしょうか?
気遣いができると仕事が効率的に進む
世の中にある仕事のほとんどは1人でできるものではありません。
そのため、気遣いができて職場で良好な人間関係が築けている人の方が業務を効率的に進められるようになるのです。
また多くの場合、気遣いは相手から返してもらうこともできます。
気遣いは見返りを求めて行うことではないのですが、相手にしてもらって嬉しかった行為は自然と自分にも返してもらえるようになるでしょう。
相手が困っていることをフォローしたら、後日自分が困っていた時に相手が助けてくれたなどは、よく職場で起こることだと思います。
このように、気遣いは助け合いの連鎖を生むきっかけにもなる大切なものです。
すぐに実践できる気遣いの一例
ここからは、具体的に今すぐ実践できる気遣いの一例を紹介します。
心がけるだけで、大きく自分の印象が変わりますので、覚えてしまいましょう。
報告・連絡・相談を後回しにしない
ビジネスマンの基本ルールである「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)は徹底しなくてはいけません。
報告・連絡・相談と気遣いは別のものだと感じるかもしれませんが、報告・連絡・相談ができていない人と仕事をするのは問題が発生しやすいリスクがあり、相手にとって不利益なことが非常に多い状態です。
まずはこの報告・連絡・相談を身につけることが、お互いに仕事をしやすい環境にするための最低限の気遣いであると考えてください。
他の人に声を掛けるときには相手の状況を確認する
自分がとても忙しく、1分も余裕がないときに限って「すいません」と声をかけてくる人はいませんか?その内容がたいした用事でなかったときには苛立ちを感じてしまうこともありますよね。
声をかけてきた方は、あなたの様子を確認しなかったか、確認したとしてもあなたが今時間を取れない状況であることを認識できなかったのでしょう。
このようなことを自分が人にやらないように、上司や先輩はもちろんですが、同僚や部下でも誰かに声をかけるときには相手の状況を見るようにしてください。
人によっては状況を確認しても判断がつかないこともありますが、その時には「今少しお時間よろしいでしょうか?」または「〇〇の件でお伺いしたいことがあるのですが」と一言聞いてから話を始めましょう。
このような前置きがあれば、忙しい状況であれば別のタイミングにしてもらうなどの方法も取りやすくなります。
始めは面倒と感じるかもしれませんが、人に話しかけるときに「今少し時間がもらえるか?」「今話して大丈夫か?」の確認をすることは、すぐに習慣付けられます。
日頃から相手の様子を見る
相手に声をかけるときだけの話ではなく、相手の気持ちの変化に気づくことができるようになるために「相手の様子を見る」ことが気遣いには必要です。
その職場に慣れてくると、周囲に対して無関心になりがちですが、それでは相手の変化に気づくことができなくなってしまうのです。
もちろん他人の感情を全て感じ取ることはできませんが、日々周囲の人の様子を伺うことで「今日あの人は体調が悪そうだ」「〇〇さんは忙しそうだ」程度のことは見えてくるでしょう。
自分が部下を持った立場になれば、部下の状況を把握できるようにならなくてはいけませんし、オフィスのように多くの人間が集まる場所では、周囲にいる人の様子を見る習慣はつけていた方が良いでしょう。
ちなみに多くの人は、〇〇さんはイライラするとキーボードを強く打つ・〇〇さんは忙しくなると独り言が増える・〇〇さんは焦ると声が大きくなるなど、感情が表現されやすい癖を持っています。
そのため毎日同じ職場にいる相手の感情を感じるのは、思っているよりも難しいことではないのです。
自分で調べてから質問に行く
職場では何かの質問をしなくてはいけない機会が多いと思います。
もちろん質問をせずに間違った判断をすることを避けるために、質問・相談は非常に大切なことなのですが「分からないから全部聞く」という姿勢は避けましょう。
自分で調べてみた結果、分からなかったことを上司や先輩に質問することが大切であり、なんでも聞いて解決しようという姿勢では自分も成長できません。
「〇〇の方法を調べてみたのですが、理解ができませんでした。申し訳ないのですがやり方を教えてもらえますか?」のように質問をしてください。
そうすれば努力した過程があることも相手に伝えることができるでしょう。
職場で席を外すときには一声かける
職場で働いていると「〇〇さんがいつの間にかいない」ということは多いと思います。
業務のための離籍であっても「またいない」と感じられてしまいますし、自分宛の電話が来たときには電話を取った人が離席理由や戻り予定を相手に伝えられずに困ってしまうでしょう。
「資料室に行ってきます」「会議に行ってきます」「外出します」などを誰かに声を掛けてから席を立てば、そのような問題は起こりません。
また、電話があったときには内線で対応してもらえることもあるでしょう。
ネガティブな言葉を極力使用しない
仕事をしていれば愚痴を言いたくなることもありますし、誰もが疲れています。
しかし、オフィスでは自分は社会人である自覚を持ち、その感情をネガテイブな言葉を使って表現してはいけません。
「疲れた」「腹が立つ」「最悪だ」「帰りたい」「もう嫌だ」などの言葉を使うと、仕事のやる気自体を疑われますし、どんなに仕事のできる方でも人間性が低いと感じられてしまうでしょう。
もちろんプライベートに関する会話の中であっても、ネガティブな言葉だけが目立ってしまいますので、休憩中でもなるべくオフィスでそのような発言は控えてください。
社外で仕事の話をしないようにする
飲み会の席などではついつい仕事の愚痴が増えてしまうこともあるでしょう。
しかし、会社の業務に関わる具体的な内容は社外で話をしてはいけません。
誰も聞いていないと思っていても、意外と近くにいる人の耳に入ってしまうこともあります。
その会話の内容によっては、会社のコンプライアンスに抵触してしまう可能性もありますので、気をつけてください。
丁寧な文字を書く
基本的にパソコンで文字を打つようになった今では、手書きの文字を人に見られる機会は減ったかもしれません。
それでも同じオフィスにいると、手書きの伝言やメモを誰かに渡すことがあるでしょう。
美しい文字が書ければ一番良いのですが、字はすぐに上手くなるものではありません。それでも丁寧に読みやすい文字を書くようにしてください。
相手が「なんて書いてあるのだろう?」と悩むような時間がないようにする必要があります。
感染症対策をする
職場は狭い空間にたくさんの人が働く環境です。
特に新型コロナウイルス流行中の今は多くの人が感染症対策に神経質になっているでしょう。
仕事を休むのが申し訳ない・有給が足りない・このくらいは耐えられるなどのような感情で体調不良のまま出勤を続けた結果、職場全体に感染症を流行させてしまう恐れを考え、通常の時期以上に自分の体調をシビアに判断してください。
普段からマスクをして過ごしていると思いますが、マスクに疲れたようであれば疲労感の少ないマスクを探すなどの方法をとり、感染症対策を怠ってはいけません。
自分自身は感染症に対する恐怖心が少ない方でも、他の人は違う考えを持っています。
つまり、感染症対策をしっかりと行うことは職場のマナーでもあるということです。
リモートワークでの気遣い
新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが多くの会社に普及し、今もなおその状況が続いている場合もあるでしょう。
リモートワークの場合は対面でなくなるため、先ほど紹介した気遣いの他にも覚えておくと良い気遣いのポイントがあります。
全ての気遣いをより慎重に行う
先ほど紹介したような気遣いは、対面であれば相手の表情や感情が感じやすいのですが、リモートワークになると話が変わります。
相手の様子が見えない状態で仕事を進めるのですから、より配慮が求められると言って良いでしょう。
今まで職場で気遣いができていた人でも、リモートワークと同時にその印象が変わってしまうこともありますので、よく注意してください。
コメントにはポジティブな言葉を多用する
今までであれば、仕事を依頼した相手にはっきりとお礼を言わなくても笑顔や態度で感情が伝えられたかもしれません。
しかし、リモートワークになると「資料受け取りました。次の資料をお願いします」のように機会的なコメントとなり、相手に冷たい印象を与えてしまう恐れがあります。
どうしても文章にして入力すると、感情が伝わりにくくなるのです。
このような状況が長く続くと、相手との関係はよくないものになってしまうでしょう。
少しオーバーと感じるかもしれませんが「受け取った資料を確認しましたが、期待通りの仕上がりでした。いつもありがとうございます」などのコメントも追加するようにすれば、相手に感謝の気持ちと相手の仕事に満足していることが伝えられるでしょう。
気遣いの注意点
職場でできる気遣いについて説明いたしましたが、気遣いはタイミングや方法を間違えると相手に悪い印象を与えてしまうこともあり、その使い分けが難しいと言えます。
たとえば、大勢の人がいる中でプライベートに踏み込んだような気遣いをしてしまう・あまりに気遣いが過剰すぎてお節介だと感じられるなどが、そのトラブルの例です。
自分が気遣いができる人だとアピールしたい気持ちが全面的に出てしまって周囲に白い目で見られるようなことのないように注意してください。
気遣いは相手を思いやる気持ちで行うものであって、自己主張のためにするものではありません。
まとめ
ビジネスシーンで活用できる気遣いの方法を具体的に紹介いたしました。
どの気遣いも少し心がけるだけで簡単に取り入れられるものばかりだと感じられたのではないでしょうか?
相手を気遣うときに一番大切なことは「相手のことを尊重する」意識です。
気遣いは本来自分のために行うことではありませんが、相手を敬って過ごすことで、長い目で見て自分自身のプラスにつながるでしょう。
まずは常に相手の気持ちに立って物事を進める癖をつけてください。そうすれば今回紹介したような気遣いは自然とできるようになります。
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