働き改革の推進により多くの企業で導入され始めたリモートワークですが、いくつかも問題点も浮き彫りになっています。
その問題の中でも上位に入るのが「上司の決裁・承認のとりにくさ」。
日本企業に根付く「ハンコ文化」がリモートワークの効率を妨げているという事例が数多く発生しているのです。
エコ活動の観点から、リモートワークの定着よりもずっと以前より企業のペーパーレス化は進んでいたはずなのですが、あまり定着しませんでした。
また、データと書面を併用している企業がかなり多く、承認まではデータで管理するものの最終承認は書面で行われているという企業は少なくありません。
ペーペーレス化はリモートワークの要であると言えますね。
リモートワークの利点を大きく損なう「ハンコ文化」
未だに、リモートで業務を行い完了できる環境が整っているのに、承認をもらうために定期的に出社をしなくてはいけないという状態を改善していない企業は数多くあります。
承認が下りるまで作業が滞るなど不都合な場合もあり、どう考えても不効率でリモートワークのメリットを潰していると言っても過言ではありません。
更に多くの会社では一連のワークフローとして一般的に実施されているのが
・書類をデータで作成
・書類を印刷後に承認し押印
・押印済みデータをスキャンし電子化
・押印済みの書面を原紙として扱い保管、また別途データも保管する
という流れになります。
こうして客観的に見てみると非常に多くの無駄なコストと労力を費やしていると思いませんか?
しかし、不効率を感じながらも「決められたことだから」と誰もが単調に作業をこなしており、業務の効率化はなかなか進みませんでした。
リモートワークをきっかけに、このコストと労力を削減するタイミングが来たと考え、根本的に承認制度の変革を行いましょう。
その方法や管理についてはこれから説明いたします。
オンラインで承認が完結する電子署名とは
まず、データを印刷してから承認するという方法を変えましょう。
実際に署名や押印ができなくてもオンライン上で承認が完了する方法として、電子署名という方法があります。
利用したことのない方には自分で押印をすることの方が安心感があるのかもしれませんが、2001年に「電子署名法」が施行され、電子署名は法的に押印や手書きの署名と同様の効力が認められました。
電子署名を行なった契約を電子契約と呼び、社内の契約だけでなく社外との間で重要な契約にも利用されています。
電子署名とはこのように世の中に定着した承認方法なのです。
電子署名のメリット
電子署名のメリットは「リモートワークがしやすくなる」それだけではありません。
リモートワークに関わらず、電子署名には多くのメリットが存在します。
具体的なものを紹介しましょう。
ペーパーレス化によるメリット
まず承認のために紙を印刷し、保管することがなくなります。
そのために印刷費用・紙代・保管管理の手間を削減し、さらに保管スペースも必要なくなります。
1日に数百件、数千件という承認をこなすような企業であれば、その節約効果は非常に大きなものになるでしょう。
また、リモートワーク時に社員が書類を持ち歩くというセキュリティ上の懸念点もなくなります。
書類に埋もれたような状態のリモートワークは現実的とは言えません。
更に、データ上では簡単に検索が行えますので、膨大な書類の中から1枚の書類を何時間もかけて探すような手間もなくなりますね。
承認スピードがアップする
従来の承認方法では「課長が出張中で承認がもらえない」「部長が外出しているので帰社後に承認を得てからの作業になる」など承認を待つという無駄な時間が発生してしまいました。
社外にも影響のある業務が承認待ちになり頭を抱えることもあったのではないでしょうか?
電子署名では、承認相手がどこにいてもスピード感を持って承認をしてもらうことが可能です。
PCはもちろん、スマートフォンからワンタッチで承認が可能なサービスもあるためです。
承認へのタイムロスがなくなることで業務が滞る機会も減るでしょう。
リモートワーク中であればこのメリットが一番大きく、承認のために出社するなどの時間のロスを大幅になくすことができます。
どこで業務が停滞しているのか把握できる
係長・課長・部長の承認が必要な書類が、どこで止まってしまっているのか?よくあるトラブルですが、大きな企業ほど上長へ承認の請求をしにくくなり改善の難しい事項でもあります。更に悪いことに万が一、誰かが書類を紛失してしまったとしても責任の所在を明確にすることはできないでしょう。
電子署名での承認システムを使用すれば、誰で承認が滞っているかすぐに確認できますし、サービスによってはアラートの利用で承認者へ承認漏れを知らせることも可能です。
毎日膨大な承認を行う必要のある役職の方も負担を減らすことができるでしょう。
電子署名導入前にするべきこと
いざ電子著名の導入を検討する際に事前に準備・検討するべきことは数多くあります。
特に社内で書面承認を残したいと考えている人がいれば電子署名の浸透は難しくなるでしょう。
しっかりとした準備を進めることで社内の方向性を一致させる必要があります。
書面による締結が義務付けられていないか
業種によっては、書面による契約しか認めてられないものも少なからず存在します。
例えば定期宅地契約・定期建物賃貸借契約・投資信託契約の約款などです。
自社の業務で電子署名が可能かどうかをまず調べる必要があるでしょう。
しかし、一部の業種を除き多くの一般的な企業での契約において電子署名が有効です。
社内の理解を深める
新しいシステムやデジタルな制度を嫌う人は一定数存在します。
電子署名のメリットを伝え、全社員で取り組めるように事前周知を進めましょう。
移行期間に従来の方法と電子署名が混在する状態を極力避けるようにします。
導入日時な事前に周知し、その日付より一斉に電子化をするのが良いでしょう。
費用対効果を考える
社内の理解を進めることの大きな説得材料でもありますが、費用対効果を確認すると良いでしょう。
多くの場合は効果的なコスト削減が望める電子署名ですが、極めて利用回数の少ない場合や書面の契約と併用が必要である業種の場合には、そうとは言い切れません。
会社の規模や業務内容によってその効果は大きく変わりますので、自社で毎日平均何件程度の承認が行われているのか?それに対し何人の労働力と紙や印刷の費用がかかっているのか?今後何十年も続けた場合などの計算をすると良いですね。
そうすることで、電子署名反対の意見も説得することができるでしょう。
電子署名の利便性と、電子署名サービス業者選定時のポイント
多くの無駄なコストと労力が必要だったハンコや著名の承認方法は、リモートワークの利点を潰し、大幅な効率ダウンを招いているとお伝えしました。
自社で電子署名システムを構築できる企業は少ないかと思いますので、電子署名サービスを利用することが必要です。
リモートワークが定着した現在、いくつもの電子署名のサービスが用意されています。
その選択には何を求めるかに重きを置く必要があるでしょう。
ここでは、そのポイントを紹介させていただきます。
セキュリティの重要性
業務の承認という非常に重要な要素を担う電子署名には高いセキュリティが欠かせません。
電子著名の需要が溢れている今、優れた無料の電子署名サービスも数多く存在していますが、アカウント管理や権限の制限面などの細かい指定も可能であり、サーバーセキュリティ対策もしっかりとされているサービスを選ぶ必要があるでしょう。
個人的な利用は別として、会社で利用するのであればサポートサービスも期待できる有料のものを選ぶようにしましょう。
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必要な書類を取り扱っているか
多くの電子署名サービスでは多彩な書類を取り扱うことができます。
テンプレートを様々用意しているサービスも多いので、社内で契約書や書式を作成する必要がなくなり効率的に作業が進められるようになるでしょう。
また、法律に関わるような特殊な書面を取り扱う場合は、利用したい書類が対応可能かどうか確認する必要があります。
使いやすいさ
あまりに使用方法が難しい場合「慣れている紙で」となってしまうのが人間です。
誰でも使いやすい直感的な操作が可能なシステムを選択することと、新しいシステムが苦手な方のためにマニュアルなどを用意するのが良いでしょう。
どんなに簡単に利用できるサービスでも、マニュアルがあるかないかで浸透率は大きく変わります。
電子承認を行うにあたり整えるべきワークフロー作成時の注意点
電子承認を採用すればより効率的にリモートワークが可能になることがお分かりになったかと思います。
しかし今までの承認フローとは流れが大きく変わるので、しっかりとしたワークフローの構築が必要不可欠であり、その完成度が低ければ誰もが利用を躊躇してしまうでしょう。
承認者・管理者を決める
セキュリティ上非常に重要な項目であり、最小人数を選定する必要があります。
例えば、最終承認は課長以上・管理者は法務担当など明確にすると良いでしょう。
その管理者の中でも権限レベルを決め、承認可能な権限・閲覧のみ権限などを細かく決定する必要があります。
承認データの保存方法を決める
通常電子承認はデータをアカウントで保存しますが、結局出力し書面にて契約書を管理している会社もあります。
どうしても書類が必要な理由がない限り、それはペーパーレス化の妨げですし、リモートワーク時には書面を管理することを社外で社員に任せることになります。
極力データのみの管理が良いですが、自社ではどのように保管管理をしていくのか決めておきましょう。
書類の検索も容易ですので可能であればクラウドにて管理するのがおすすめですね。
この機会に業務プロセスも見直す
せっかくワークフローを構築するのですから、今までの業務プロセスに無駄がないかを検討しましょう。
一度構築してしまったワークフローは改善を行うことがあっても根本的な変革を行うのには多くの手間がかかります。
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まとめ
リモートワークに有効な電子署名について、そのメリットや導入方法を説明させていただきました。
多くの電子署名サービスの中から、業務に適したものを選択することはもちろん、社員への分かりやすいマニュアルを作成し電子承認における新しいワークフローを準備しましょう。もちろん事前準備に一定のコストと労力はかかりますが、長期的に見ればすぐに回収可能だと思います。
ペーパーレス化とリモートワークは同時進行で進めていき、どのような状況でも臨機応変に業務を遂行できる環境を整えましょう。